心疾患で障害年金を受給するためのポイント

 

心臓に何かの障害があり、それによって血液の循環不全が起こり、引き起される病気を心疾患と言います。心疾患は日本では2番目に多い病気です。特に心筋梗塞は突然死の最大の要因と言われます。

 

心疾患とは

心疾患には、脈の乱れを引き起す病気(不整脈)や先天性の心臓病、心筋や心膜の病気などいろいろなものがあります。その中でも生活習慣が原因となるのが虚血性心疾患です。

虚血性心疾患は、冠動脈が動脈硬化のために補足なり、心臓を動かしている心筋に酸素や栄養を送りにくくなってしまうことが原因で起こります。

その結果、心筋が一時的に血液不足になって、胸に痛みを感じたり(狭心症)、完全に血管が詰まってしまい、強烈な痛みを感じる(心筋梗塞)ことがあります。

狭心症 血管が狭くなり、血液の流れが悪くなるために血液不足となる
心筋梗塞 完全に血管が詰まり、そこから先への血液の流れが途絶える

 

日本人と心疾患

人口動態統計によると、令和3年の死亡率(人口10万対)は、21万4千人で、悪性新生物(がん)に次いで2番目に多い数字でした。

 

狭心症と心筋梗塞

狭心症

普段は、無症状なのに、冠状動脈が細いために、運動やストレスがかかった場合に心筋の酸素消費量が多くなったときに必要な血流が確保できず、痛みがでるのを狭心症といいます。動脈硬化ではなく、冠状動脈のけいれんによって引き起される場合もあります。安静にしていると、自然に痛みは消え、通常、15分以上続くことはありません。

 

心筋梗塞

突然、冠状動脈が閉塞し、強烈な痛みが30分以上続くと心筋梗塞が疑われます。すぐに処置しなければ、死に至る病気です。

 

障害年金における心疾患

適用となる疾患例

慢性心包炎、リウマチ性心炎、慢性虚血性心疾患、狭心症、僧帽弁閉鎖不全症、心筋梗塞など

 

認定基準

障害の程度 障害の状態
1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認めれれる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

 

認定要領

臨床症状、検査成績、一般状態を総合的に判断されます。

 

検査項目

区分 異常検査所見
A 安静時の心電図において、0.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰性T波の所見のあるもの
B 負荷心電図(6Mets未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの
C 胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの
D 心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの
E 心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの
F 左室駆出率40%以下のもの
G BNPが200pg/ml相当を超えるもの
H 重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、あるいは3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの
I 心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ今日まで狭心症状を有するもの

 

一般状態区分

区分 身体活動能力
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの

例えば、軽い家事、事務など

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベット周辺に限られるもの

 

前述の区分を身体活動能力に当てはめると、次の通りとなります。

区分 身体活動能力
6Mets以上
4Mets以上6Mets未満
3Mets以上4Mets未満
2Mets以上3Mets未満
2Mets未満

※Metsとは、代謝当量のことをいいます。

 

疾患別に各等級に相当すると認められるものは、次のとおりになります。

弁疾患

障害の程度 障害の状態
1級 病状が重篤で安静時においても、心不全の症状を有し、かつ一般状態区分表のオに該当するもの
2級 人口弁を装着術後、6カ月以上経過しているが、なお病状をあらわす臨床所見が5つ以上、かつ異常所見が1つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見、かつ病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級 人工弁を装着したもの

異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見、かつ病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

 

心筋梗塞

障害の程度 障害の状態
1級 病状が重篤で安静時においても、心不全の症状を有し、かつ一般状態区分表のオに該当するもの
2級 異常検査所見のFに加えて、病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち2つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級 EF値が50%以下を示し、病状をあらわす臨床所見が2つ以上あり、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

異常検査所見のA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見及び心不全の病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

 

虚血性心疾患

障害の程度 障害の状態
1級 病状が重篤で安静時においても、常時心不全あるいは狭心症状を有し、かつ一般状態区分表のオに該当するもの
2級 異常検査所見が2つ以上、かつ軽労作で心不全あるいは狭心症などの症状をあらわし、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの
3級 異常検査所見が1つ以上、かつ心不全あるいは狭心症などの症状が1つ以上あるもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

 

難治性不整脈

障害の程度 障害の状態
1級 病状が重篤で安静時においても、常時心不全の症状を有し、かつ一般状態区分表のオに該当するもの
2級 異常検査所見のEがあり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級 ペースメーカー、ICDを装着したもの

異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす異常所見が1つ以上あり、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

 

大動脈疾患

障害の程度 障害の状態
3級 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

 

先天性心疾患

障害の程度 障害の状態
1級 病状が重篤で安静時においても、常時心不全の症状を有し、かつ一般状態区分表のオに該当するもの
2級 異常検査所見が2つ以上及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

Eisenmenger化を起こしているもので、かつ一般状態区分表のウ又はエに該当するもの

3級 異常検査所見のC、D、Eのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

肢体血流比1.5以上の左右短絡、平均肺動脈収縮期圧50mmHg以上のもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

 

ペースメーカーを入れた場合、障害年金申請できます

心臓ペースメーカー、ICD、人工弁を入れた場合は、原則3級の障害年金に認定されます。

 

心臓機能障害の身体障害者手帳と障害年金の認定基準

身体障害者手帳と障害年金の認定基準は、必ずしも一致しません。

障害者手帳は持っているけど、障害年金を受給されていない場合もあります。

全く別の制度ですので、受給の可能性もあります。

まず、ご相談ください。

 

障害年金の受給をお考えの方は当事務所へお気軽にご相談ください

所外年金の申請は大変です。初診日の証明、病歴申立書とつくったり、住民票、戸籍謄本・・・と。たいへんな労力と時間を要します。

また、申請を通すためには、ちょっとしたコツがあります。医者とのやりとりも経験が生きます。一般的には、不慣れなために、不支給になるケースもあるようです。

大変残念なことです。障害年金は、保険料を払っていれば、堂々と勝ち取る権利があるものです。ぜひ、専門家にお任せください。