【専門家が解説!】うつ病で障害年金をお考えの方へ

目次

うつ病とは?
うつ病の特徴的な症状
うつ病の傷病
うつ病で障害年金を受け取るために必要な条件は?
うつ病による障害認定基準とは?

 

うつ病とは?

「心理的なストレス」、「脳内の変化」、「なりやすい体質」の3つがうつ病の原因です。
3つの原因が重なって、うつ病を引き起こしています。
うつ病は心の病と思われがちです。しかし、脳の病気でもあります。
心理的なストレスとは、過労や対人関係のトラブル、離婚や死別といった生活上の問題が原因となるストレスです。
心理的なストレスが原因で、脳の働きのバランスが崩れ、うつ病が発症します。
神経細胞が脳にはたくさんあり、情報を伝達しています。
そして「感情」が発生します。ストレスにより、脳の一部の神経細胞の形に変化が生じ、感情や考え方にゆがみが起きます。

うつ病の特徴的な症状

心の不調や体の不調がうつ病では発生します。
睡眠障害や疲労感・倦怠(けんたい)感、首・肩のこり、頭が重い、頭痛など体の不調としてあげられます。
意欲・興味の減退、仕事能力の低下、抑うつ気分、不安・取り越し苦労など心の不調としてあげられます。
他の病気のように血液検査や画像検査などで異常を見つけることができません。
聞き取りを行って診断をつけることになります。うつ病は専門医でも診断が難しい病気です。

うつ病の症状

代表的な症状

自分で感じる症状
(自覚的症状) 憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安である、イライラする、元気がない、集中力がない、
好きなこともやりたくない、細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める、物事を悪い方へ考える、
死にたくなる、眠れない

周囲からみて分かる症状
(多角的所見) 表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える
体に出る症状 食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、動悸、
胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く

※厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より
(宮岡等:内科医のための精神症状の見方と対応、医学書院、1995を改変)

うつ病の予兆に気づくには?

1 口数が少なくなる
2 イライラしてくる
3 朝や休日あけに調子が悪い
4 遅刻、欠勤が増える
5 だるさを訴える
6 身辺整理をする
上記のようなサインがうつ病のサインです。周りの人が気づくことが非常に重要です。
できるだけ医療機関を受診して貰うことをオススメしましょう。

だだし、無理に受診することを推奨すると、本人が余計に落ち込んでしまうことになるので、注意が必要です。本人が信頼している人に伝えてもらうとよいでしょう。

うつ病に似た、でもうつ病でない、うつ病に似た病気

うつ病に似た、でも、うつ病ではない病気があります。

憂うつな気分や意欲・興味の低下など、うつ病に似た症状を起こす病気です。
具体的には、「不安症」や「パーソナリティ障害」、「適応障害」などの精神疾患です。

「認知症」もうつ病と間違えられることがあります。脳や体の病気です。
うつ病は認知症に移行しやすいこともわかっているため、高齢者のうつ病の治療は大切です。

「脳梗塞」もうつ病と間違えられやすいです。
脳の血管が詰まって「脳梗塞」になると、脳の働きが悪くなるため、うつ症状がみられることがあります。
急に症状が現れることが特徴です。言葉が出にくい、物の見え方がおかしいといった脳梗塞独特の症状がないかをチェックする必要があります。

また、「甲状腺の病気」などでもうつ病に似た症状が出ることがあります。

うつ病と間違えられやすいアルコール依存症など

アルコールなどの依存性物質やインターフェロンなどの薬剤が、うつ病に似た症状を起こすことがあります。

これは、病気ではありません。
アルコール依存症になるほどの量の飲酒をしていないか、
副作用でうつ症状が出るような薬を服用していないかがうつ病でないかどうかの判断残量となります。

障害年金の診断書に記載されるうつ病の症状

障害年金の診断書に記載されるうつ病の症状はおおむね下記の通りとなります。
1.思考・運動制止 
症状としては、思考や決断力などの精神活動が停滞し、会話の減少、思考過程の遅延や緩慢な動作です。
また、根気がない、集中できない、決断ができない、億劫や面倒などがあります。
口数が極端に減って行動も不活発、寝床から動かなくなるがあります。

2.刺激性、興奮
症状として、イライラする、怒りっぽくなるがあります。

3.憂うつ気分
症状として、「気分が沈む」「気分が重い」「ゆううつだ」と訴えます。

4.自殺企図(じさつきと)
症状として、飛び降り、首つり、リストカット、大量服薬など様々な手段で自殺を企てます。
自傷行為と自殺企図は異なる症状です。

5.希死念慮(きしねんりょ)
症状として、自らの死を願う気持ちが発生します。
「死にたい」と言う場合以外に、「ずっと眠りたい」、「消えたい」、「車にひかれたら楽だろうな」など
死を意識している状態も含まれます。

うつ病で障害年金を受け取るために必要な条件は?

うつ病で障害年金を受け取るためには、次の2つの要件を満たす必要があります。

① 初診日に関する要件
初診日とは、「あなたが申請しようとしている病気やケガで、はじめてお医者さんにかかった費」です。
この初診日で、厚生年金保険または、国民年金保険の被保険者でなければなりません。
日本は、国民階年金ですので、普通に過ごしていれば、当然に被保険者ではあります。
うつ病で、障害年金を申請するためには、はじめてうつ病と診断された時に、
厚生年金保険または国民年保険の被保険者でなくてはなりません。

② 保険料の納付に関わる条件
「初診日において、保険料を納付した期間と保険料の免除を受けた期間を合わせた期間が
被保険者期間の3分の2以上を占めている」または、「直近1年間に滞納をしていない」の条件を満たす必要があります。
この要件を満たさない場合は、障害年金の受給はできません。

うつ病との診断を受けた日から1年6か月後の障害認定日の障害の程度により障害等級が決まります。
働いているからと言って、すぐに日常生活能力があると判断されるわけではありません。
仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を確認したうえで判断されます。

うつ病は体調の良い時と悪い時を繰り返します。
認定は、現症のみによって判断せず、「症状の経過及び日常生活活動の状態を考慮」されます。

通常の生活費のほかに治療代を稼ぐために仕事を調節することができず、治療に専念できない方もおられると思います。
しかし、障害年金を受給できれば、経済的負担を和らげることができるでしょう。障害年金の請求をご検討ください。

うつ病による障害認定基準とは?

うつ病の等級と障害認定基準を大まかに解説すると以下の通りです

1級: 高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、
ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要な状態 障害が重く、身の回りのことがほどんどできない状態
2級: 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり
又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受ける状態 日常生活が、かなり制限をうける状態
3級: 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、
これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受ける状態 労働が制限を受ける状態

うつ病の日常生活能力の判定

うつ病による日常生活能力への影響は、7つの項目で医師が判定します。これが障害年金の診断書に記入されます。
判定項目の一例
・きちんとした食事 配ぜん、片付け、3度の食事をバランスよく摂れているかどうか
・身辺が清潔かどうか 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができるか
・自室の清掃や片付けができるか
・金銭管理と買い物はできるか 金銭を独力で管理できるか、やりくりができるか
・一人で買い物が可能か、計画的な買い物ができるか
・通院と服薬はどうか 規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるか
・他人との意思の伝達、対人関係はどうか 他人の話を聞くことができるか、自分の意思を相手に伝えることができるか、集団的行動が行えるか
・安全の保持と危機対応はどうか 事故等の危険から身を守る能力があるか
・通常と異なる事態となった場合に、他人に援助を求めるなどを含めて、対応することができるか
・社会性はどうか 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能か
・社会生活に必要な手続が行えるか

上記のような例を最高4点、裁定1点で評価し、診断書に記入します。

うつ病の日常生活能力の程度

次の5項目で日常生活能力の程度を評価します。これを診断書に医師が記入します。
1 うつ病による精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
2 うつ病による精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
3 うつ病による精神障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
4 うつ病による精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
5 うつ病による精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

うつ病で仕事をしている場合

「仕事をしている場合については仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認して日常生活能力を判断する」がうつ病の障害認定基準とされています。
就労できることは一般的に「日常生活能力が高い」と評価されてしまうのも事実です。
したがってうつ病で仕事に「支障が出ている状況」を診断書でしっかりと示していくことがポイントです。

就労状況の調査項目

1 勤務先(一般企業、就労支援施設、その他)
2 雇用体系(障害者雇用、一般雇用、自営、その他)
3 勤続年数
4 仕事の頻度(週に〇日、月に○○日)、出勤日数(障害認定日の前月と前々月)
5 ひと月の給与
6 職種、仕事の内容
7 仕事場での援助の状況や意思疎通の状況
8 就労の状況(欠勤・早退・遅刻の状況を含む)
9 就労により日常生活能力が著しく低下した場合はその状況
10 通勤方法、通勤時間
11 仕事中、仕事が終わった時の体の状態

等級判定ガイドライン

就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、
1級または2級の可能性を検討する。 就労移行支援についても同様とする。
障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。

うつ病の障害認定で考慮されるその他のポイント

「日常生活能力の判定」、「日常生活能力の程度」、「就労している場合には就労状況」がうつ病の障害認定では
基準となります。それと同時に下記の項目を総合評価して等級が決定されます。

項目 要素 具体的な内容(等級判定ガイドラインより)

現在の病状、状態
うつ病については、現在の症状だけでなく、
症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況など)
及びそれによる日常生活活動等の状態や予後の見通しを考慮する 適切な治療を行っても症状が改善せずに、
重篤なそうやうつの症状が長期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討

療養状況 ・通院の状況(頻度、治療内容など)
・入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)
・在宅での療養状況 ・病棟内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援助が継続して必要な場合は1級の可能性を検討
・在宅で、家族や重度訪問介護等から 常時援助を受けて療養している場合は1級または2級の可能性を検討

生活環境 ・家族等の日常生活上の援助や福祉サービスの有無
・一人暮らしの場合、その理由や一人暮らしになった時期 ・一人暮らしであっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合は、それらの支援の状況を踏まえて2級の可能性を検討。また家族等の援助や福祉サービスを受けていない場合であっても、その必要性を考慮

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